支援のヒント

A 車いすからおりた時のポジショニング

 1日に1回以上、車いすからマットやベッドなどにおりて、身体を伸ばしたり、リラックスしたり、姿勢変換したりする事は、とても大切です。

私たちは、座っている間も、身体がつらくないように重心を右に左に移動したり、背筋を丸めたり伸ばしたりなど無意識に身体を動かしながら座っています。また、書字やパソコン入力などの動作の時には、片手で身体を支えたり、両肘で身体を支えたりして、バランスを取りながら作業をすすめています。

しかし、肢体に不自由のある児童生徒は、身体に緊張が入ってしまうため、うまく身体のバランスを取り続けたり、書字などの動作の時にうまく身体が支えられなかったりします。そのため、身体のどこか一部分に負担がかかり続けたり、得意な所を使い続けたりしたまま、作業を続けてしまいます。そうしたことを積み重ねると、身体の一部に無理な力がかかり、身体がどんどん変形してきてしまうのです。身体が変形してしまうと、将来的に座り続けることが難しくなってきてしまいます。

   

※無理な力がかかっている姿勢の一部を再現しています。

したがって、マットなどにおりて身体をのばしたり、リラックスさせたりすることは、身体に負担がかかっていたり、使い続けてしまったりした身体の力を、いったん抜くことができるのです。毎日、短時間でも取り組むことで、身体の一部にかかる負担を軽減でき、身体をよい状態に保つことができます。無理し続けることのないようにすることが大切になってきます。

 そこで、マットなどにおりた時の姿勢つくりを、ご紹介したいと思います。

※側弯があり、緊張の強い生徒のポジショニングの例を写真でご紹介します。

◎仰臥位(仰向け姿勢)

長所                         短所

・支持面が大きく、重心も低く、安定して安楽な姿勢。  ・下顎、舌根が後退、沈下しやすい。

・視野が広い。                    ・痰や唾液がのどに溜まりやすい。

                           ・胃食道逆流が起こりやすい。

                           ・視野が真上(天井)に限られる。

    

※ポイント

頭部:気道確保のためにタオルや枕を入れる。顔がいつも横(同じ方向)に向いていると脊柱や胸郭の変形につながる。

上肢:呼吸がしやすいように腕の下にクッションを入れる。

下肢:股関節の脱臼を防ぎ、深い呼吸を促すために膝下や両膝の間にクッション等を入れる。

 ※点で体を支えるのではなく、広い面で支えると安定、安心する。

 

◎側臥位(横向き姿勢)

長所                           短所

・舌根沈下の心配は少ない。                ・転がりやすく、不安定になりやすい。

・気道確保しやすい。                   ・右側が下になった側臥位は胃食道逆流を誘発する。

・排痰時に強い咳を出しやすい。

・周囲に気づきやすく、視界に手が入るので感覚運動や

 コミュニケーションをとることがしやすい。

    

※ポイント

頭部:仰臥位よりもタオルや枕の高さが上がることが考えられる。頭部の傾き方に注意する。ハンドタオル等を敷いておくと、分泌物が出てきたときにクッションを汚さずにすむ。

上肢:腹式呼吸の妨げにならないよう、上になっている腕の位置に注意する。(前面クッションに上側の腕を乗せて腕の重みを逃がす)

体幹:腰の後ろが反らないように、前面にクッション等を置いて預けられるようにする。

下肢:上になっている足の位置を工夫することで骨盤が安定する。股関節、膝を屈曲させ、腹部を緩める。

※傾きや腕、足の位置を変え、バリエーションのある側臥位を行うことで変形拘縮の予防や換気の改善、排痰を促すことができる。

 

◎伏臥位(うつ伏せ姿勢)

長所                     短所

・下顎後退、舌根沈下の心配は少ない。     ・口や鼻が塞がれて窒息の危険がある。

・分泌物を出しやすい。            ・視界が悪い。教員からも表情の観察がしづらい。

・リラックスした状態になりやすい。

・腕や手の動きがしやすくなる。

・胃食道逆流になりにくい。

 ※ブーメランクッションを使用

      

 ※三角マットを使用

  

 

※ポイント

頭部:口や鼻が塞がれないように顔の向きに注意する。ハンドタオル等を敷いておくと、分泌物が出てきたときにクッションを汚さずにすむ。

上肢:感覚運動を行う場合は動かしやすいように工夫する。

下肢:足首の下に丸めたバスタオルなどを入れて、足首が左右に倒れないようにする。

   両脚の間にタオルやクッション等を入れ、足が交差しないようにすることで股関節脱臼を防ぐ。

 ※伏臥位マット使用の際はずり落ちないように注意する。

※口、鼻の閉塞による窒息注意。柔らかすぎる布団やマットに顔が埋まるような状態は避ける。